6.おわりに

もう随分と昔の話しになってしまったが、著者が大学院の頃は、拡散律速な界面成長(Diffusion-Limited Aggregation: DLA)モデルが、フラクタルなパターン形成の一例として注目され、樹枝上結晶成長のモデル化や理論的な研究が進んだ時期でもあった[15]。そんな中で、金平糖とDLAや樹枝上結晶成長との関連を示唆する内容の話しを耳にする機会もあったが、正面切って実験的に調べた研究や、ましてや論文にまとめた例は、意外にもあまり目にしなかった。

それから幾年月。本稿の共著者が大学院生として研究室に配属となったのをきかっけに、成長の様子を実際に自分たちの目で確かめてみよう、ということになったものの、この種の実験について我々は素人も同然で、このような文章を「固体物理」の誌上で、しかも「実験室」のコーナーに紹介いただくについては、いささかのためらいもあった。この小文をきっかけに、この日本のどこかで、金平糖が種となって、より洗練され深みのある研究が発展することを願うばかりである。

最後に、この研究を暖かく見守っていただいた東北大学物理学教室の物性理論グループの皆様に感謝いたします。


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© Yoshinori Hayakawa (2007)