PDFファイルの作成法

全学の情報基礎で、「LaTeXを使ってエッセイを作成し、それをPDF形式のファイルで提出せよ」という課題を出した。LaTeXの使い方はもちろんとして、DVIファイルをPSやPDFに変換する方法についても、もちろん授業で扱ったし、授業のWEBサイトにも(自分としては)かなり詳しく説明しておいたつもりだった。

締め切りが近づいたので、ぽつりぽつりとリポートが提出されてきた。皆、当初の指示どおり report6.pdf というファイル名で提出している。ところが、いざそれを開こうとすると、提出されたうちの半分近くがエラーになってAcrobat Readerでは開けない。不思議に思ってエディタで開いてみると、なんとそこに現れたのはLaTeXのソースファイルだった。

どうやら、学生の多くが、ファイルの拡張子を .tex から .pdf に変えればPDF形式になる、と考えたようだ*1

確かに GIMP などの画像処理ソフトでは、保存する際に拡張子を .gif, .jpg, .tif などと変えるだけで、それに対応したフォーマットで保存してくれる。けれども、拡張子はファイルの種類を区別するために「後から」付けたラベルみたいなものなので、ラベルだけ付け替えても中身は変わらない、というのが一般的な常識だろうと思う。

ただ、そのことは決して「あたりまえ」とは言えないかもしれない。もしかすると新バージョンの Windows では、ファイルの拡張子を付け替えようとすると、勝手に「ファイルコンバーター」が起動して、しかるべき形式に変換してくれるかもしれない。拡張子がファイルのタイプを表すラベルだとしたら、それを付け替えることで、中身も自動的に処理される、という発想は、ひょっとするとオブジェクト指向の先を行く考え方かもしれない。

安いワインのラベルを高級ワインのそれと張り替えるだけで中身まで美味しくなったら素敵だけれど、実際のところ、案外ほんとうにそうかもしれない。

*1 教員が説明したつもりでも、学生がこちらの期待通りに理解しているとは限らない。私が担当する情報の授業(いつも100人規模)では、1回の説明で半数が、2回目で残りの半分(全部で75%)が・・・という具合に、漸近的に理解率が増加してゆくという印象だ。そうすると、9割の学生に理解してもらうには、同じことを3回は説明する必要があるわけだが、仏の顔も三度まで、ではないけれど、それくらいがお互いの忍耐の限度かもしれない・・・。ともあれ、この件は我ながら少々ショックであった。反省して、来期はさらに基本的なところからちゃんとやろうと心に決めた。

言い訳がましくなるけれども、今年度の入学生は高校の必修科目として新設された「情報」を全員が勉強済みのはずで、そのことに対応して大学の「情報基礎」も内容が(よりハイレベルに)変更されたのだった。ところが蓋を開けてみると、昨年までの学生と比べて知識や技量において別段変化は見られないように感じた。どうなっているのだろう。


大学ぐらしに戻る