行ったり来たり

この大学はキャンパスが市内のあちこちに分散しているので、別のキャンパスで授業や会議がある度に、自家用車やバスでの移動を強いられる。このことは別にウチの大学に限ったことではなくて、日本全国の「大きな」大学では、きっと似たような事情を抱えているのだろうと思う。

僕が毎日を過ごしているのは、青葉山という丘(山?)の上のキャンパスなのだけれど、その山の麓にはむかし教養部だったキャンパスがあって、1〜2年生の授業は主にそちらで行われている。前期も後期も(ついでに、夏休みも)、そちらで担当している授業があるので、週に最低1回は、山道を下って・上ることになる。健康のため、というよりは、気分転換のため、特に急ぎの用がない限り(あっても?)歩いて通うことにしている。

片道20分ほどの距離を歩くのは別に大変とは思わないが、多くの学生も行き来しているその道は、正直言って、あまり心地よいところではない。

歩道は道路の片側のみで、車道との間に段差は無く、一般的なガードレールで仕切られているだけだ。すぐ脇を、車が猛烈な勢いで走り去って行く。歩道の反対側は山の斜面で、ガードレールとの間の実質歩くことのできる幅は1mくらいのもの。側溝のドブ板の上を歩いている感じだ。自転車もそこを通るので、すれ違いはかなり窮屈(というか危険)で、草が生い茂る季節には、往来できる面積はさらに小さくなる以前は草ぼうぼう状態が続いていたけれども、最近は理学部に近い歩道は斜面の草刈りが行われるようになって、それでも随分と歩きやすくなったと思う)。

冬場に歩道が除雪されることは(全く)無いので、つるつるに凍結した道を下りるのは大変かつ危険だ。

最近、この物理学科では、学部の学生に履修時面談を行っている。授業の履修登録を行う際に、学生が教員の部屋を訪れ、学習や生活について色々と相談をするという制度で、幸い、今のところ深刻な問題を抱えた学生にあたったことは無いので、「これまでどおりがんばろうね」みたいな話しをする程度で(僕の場合は)何とかなっている。

その面談で、成績も良好で、とてもやる気のある1年生に「なにか困っていること、ないですか?」と尋ねたところ、「特にありませんが、敢えて言わせていただくと、下からここまで上がってくるのがとても大変でした」とのこと。

多くの教職員(特に意志決定に関わっている方々)はキャンパス間を自動車で移動するので、こうした学生のキモチを想像する感度が落ちているんじゃないか、という気がしてならない。

山から下りるのに、(仙台市営の)バスを使うことも可能だが、1時間に2本程度(時間帯や曜日によっては1本)しか運行しておらず、最低でも150円はかかり、そして、ほぼ間違いなく遅れる。先日、集中豪雨のような天気だったので、さすがに歩くのは断念し、バスで授業に向かうことにした。ところがバスは20分以上も遅れ、危うく授業に遅刻するところだった。これでは、学生に対して「授業に遅刻しないように」とも言えなくなってしまう・・・・

僕が学生だった頃は、大学がキャンパス間を結ぶバスを運行していて、学生・教職員は無料で乗ることができた。詳しい事情は判らないが、運転手の定年退職に合わせて廃止されたそうで、その後、キャンパスが分散していることに対して、大学が学生に対して行うケアはゼロとなったまま、今日に至っている。

日本の大学は、他の先進国に比べて、授業料がとても高いのだそうだ。それは、主にこの国が大学教育への出費を渋り続けている(GDP比率で他国の半分)ことによるらしい。そうした高い費用を投じて入学した学生に対して、大学はさらにバイクや車の購入を暗に強いているわけで、このままでホントに良いのだろうか。


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