情報基礎A 「Cプログラミング」(ステップ7・ソーティング)
このページでは、配列に保存されている数の並べ替え(整列、sorting)について考える。
1.配列を使ったデータのソーティング
いきなりではあるが、身長がまちまちの人々が一列に並んでいる状態から、あなたの指示で、背の低いほうから大きい方に、順番に整列させ直したいとしよう。 このとき、(場所が大変手狭なので)、あなたが指示できることは、身長を見比べながら、列の中の二人を入れ替える操作のみ、という状況設定にしてみよう。 人数が10名くらいならば、「テキトー」にやっても、すぐに作業は完了するだろうが、100名くらいになると、きちんとした方針を立てないと、 うまくコトは運ばないだろう。
そんなとき、割合と自然に思える手順(のひとつ)は、
- まず列全体を見渡し、一番身長の低い人を見つけ、列の先頭の人と、その人の場所を入れ替える。
- 次に、先頭から2番目より後ろの中から、(つまり、列全体で一番小柄な現在の先頭の人は除いて)一番身長の低い人を見つけ、2番目の人とその人の場所を入れ替える。
- このように、着目する位置を後方にずらしながら、その位置よりも後方の中で一番小柄な人を見つけ、入れ替えを行う。
- 着目する位置が列の最後尾から一人前に到達したら、作業終了
ではないだろうか。これをプログラムとして実装するには
- 配列の注目する要素の場所(ここでは
i
としよう)を順にずらす。 i
以降で一番値の小さい要素の場所(j
としよう)を見つけるi
番目とj
番目の要素(の値)を入れ替える
がCで記述できれば良さそうだ。 4人の場合に、この方式で並べ替える過程を図示してみた:
注目個所の移動
注目個所を順に後ろにずらす処理は、for
文を使えば、簡単にできそうだ。敢えて書くまでも無いが(N
を人数とすると)、
int i ; ・・・ for (i = 0 ; i<N-1 ; i=i+1) { 配列の中の最小値の場所を見つける処理 入れ替える処理 }
配列の中の最小値の場所を見つける
最小値を見つけ出す処理は、前のステップの説明なども参考にすると
#include <float.h> float data[N] ; int i,j,k ; float min ; ・・・ min = FLT_MAX ; for (k=i ; k<N ; k=k+1) { if (data[k]<min) { min = data[k] ; j = k ; } } |
FLT_MAX
を使う場合は、あらかじめ
#include <float.h>
しておく。
といった形にまとめられるはずだ。ここで、N
はデータの総数のつもり。
また、FLT_MAX
は、float型で表現できる最大値を表す記号である。
最小値の可能性のある場所毎に、その場所(k
の値)を別の変数(j
)に
記録しておくところがミソである。
そうすると、ループが終了した時点で、j
には、最小値が見つかった場所がセットされている。
配列の中の2つの要素を入れ替える
これは、ここまで学んだ諸君には造作無い処理のはずだ。作業用の変数(ここではw
)を用意して、
float w ; ・・・ w = data[i] ; data[i] = data[j] ; data[j] = w ; |
とすればよい。
3つの処理を組み合わせる
以上の3つの工程をひとつのプログラムに組み立ててみたのが、以下に示す例である:
#include <stdio.h> #include <float.h> #define N 10 /* データの総数(10)を記号Nで表す */ main( ) { float data[N] = { 152.1, 175.3, 177.3, 144.7, 139.2, 161.2, 153.1, 185.3, 168.3, 154.8 } ; int i,j,k ; float w,min ; for (i=0 ; i<N-1 ; i=i+1) { /* 注目点を1つずつ変える */ min = FLT_MAX ; /* 最小値の出発値をセット */ for (k=i ; k<N ; k=k+1) { /* iから後ろを探す */ if (data[k]<min) { /* より小さな値を見つけたら */ min = data[k] ; /* その値と、 */ j = k ; /* 場所を記憶しておく */ } } w = data[i] ; /* iとjの内容を入れ替える */ data[i] = data[j] ; data[j] = w ; } for (i=0; i<N ; i=i+1) { /* 確認のため、データを表示 */ printf("%f\n",data[i]) ; } }
2.バブルソート
上では、「場所i
より後ろで一番小さな値を探す」方針で並べ替えを行ったが、(似てはいるが)別のアプローチも考えられる。
例えば
- 注目点
i
を、列の先頭から順に後ろにずらす i
より後ろの人(j
)とを一人ずつ比べ、j
のほうが身長が低かったら、i
と交換i
が最後尾より一人手前まで到達したら、おしまい。
この方法は、整列(ソーティング)の最も基本的なアルゴリズムとして知られ、バブルソート(bubble sort)と呼ばれている。 最小値を探す手間が省ける分、プログラムは簡単になる。 その一方で、「全てのペアについて調べる」ため、作業効率は悪い(上記の、最小値を探しながらの方法のほうが、処理は数倍速い)。
バブルソートを使ったプログラムの例
#include <stdio.h> #include <float.h> #define N 10 /* データの総数(10)を記号Nで表す */ main( ) { float data[N] = { 152.1, 175.3, 177.3, 144.7, 139.2, 161.2, 153.1, 185.3, 168.3, 154.8 } ; int i,j ; float w ; for (i=0 ; i<N-1 ; i=i+1) { /* 注目点を1つずつ変える */ for (j=i+1 ; j<N ; j=j+1) { /* i+1より後ろを探す */ if (data[i]<data[j]) { /* 順序が違っていたら */ w = data[i] ; /* iとjの内容を入れ替える */ data[i] = data[j] ; data[j] = w ; } } } for (i=0; i<N ; i=i+1) { /* 確認のため、データを表示 */ printf("%f\n",data[i]) ; } }
計算の過程をイメージしやすくために、データが4件の場合に、整列が進んでいく様子を図示してみた:
ソーティングは、データ処理のあらゆる場面に必要な基本的な作業なので、効率的なアルゴリズムが色々と研究されている。 表題に「アルゴリズム」とある教科書には必ず登場する定番のトピックなので、これから先を勉強したい者は、 図書館などで探してみるとよい。