ダム

家から少し車を走らせると,田んぼの中の国道の道端にちょっといい感じの喫茶店(レストラン?)がある。 高い天井の室内にはいつもジャズが流れているけれども,昔のジャズ喫茶のようにJBLか何かの大きなスピーカーが鳴っているわけでもなく,さりとて,とりあえず有線,といったわけでもなく,休憩するのにちょうどよい感じの音質と音量だ。

遅い昼食の後の帰り道,天気も良いというので,すこしわき道に入ってみることにした。 いつもは直進する信号を右に折れると,初めて通るその道は曲がりくねりながら山のほうへと続いていた。 そしてその先には,まるで立原道造の詩を連想させるような農村が,山の間を縫うように広がっていた。 美しい景色だった。

ルームミラーを見ると,後ろからは大きなキャンピングカーを牽引したRV車が僕の車に続いている。 しばらく走ると,その道のどんづまりには農業用のダムがあって,湖畔は小規模ながらキャンプ場として整備されていた。 すでにもう先客がいて,小屋ほどもあるテントを張って家族で何かしていた。 ここはそのスジの人たちには割と有名な場所なのかもしれない。

写真の左手側に林が広がっているが,そこは自衛隊の演習場になっていて,立ち入り禁止の看板があちこちに立てられていた。 砲撃の騒音や米軍演習などで何かと話題にのぼる場所だ。 この物騒な場所の存在のおかげで,結果的に,昔ながらの農村は「開発」を免れているのかもしれない。


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