雪の朝

朝まだ暗いうちに家を出る。 きっとどこの地方都市でも同じなのだろうけれども、仙台の朝の渋滞はひどくて、雪の朝ともなれば、通勤に2時間以上かかることもある。 これまでの最長記録は、日中突然雪が降り始めた日の帰宅で、3時間ほどを車の中で過ごすことになった。 万事が万事 効率的で生産的であれば良いとは思わないけれども、渋滞の列の中に居るときは、なんだかとても無駄をしているようで、情けない気分になる。 せめて一日の出だしくらいは快調に滑り出したいものだと、去年から早起き出勤を始めたのだ。

その日は雪だった。 大学の駐車場に入ると、論文審査の時期のせいか、昨日から置いたままだったらしい車が数台停まっているだけで、タイヤの跡はまだどこにもない。 駐車位置を示す白線が見えないので、日ごろの勘を頼りにハンドルを切る。 ちょっとだけ行き過ぎたような気がしたので、最後に少しバックした。 そして、後部座席に置いたディパックと上着を取って、建物に入る。 雪の上には、そうした何気ない一連の行動が記録されていた。

もし靴底が朱肉の要らないハンコのようになっていて、足跡が消えないまま残りつづけるとしたら、10年も生活した後には、どんな模様が地面に描かれているのだろう。 そのほとんどが、自分のオフィスとトイレの往復だったとしたら、ちょっとカナシイだろうな。


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