小さな部屋

この家の二階のトイレの脇には,90cm四方程の広さのもの入れがあって,掃除機や扇風機,ティッシュペーパーの箱などが無造作に置いてあった。さすがにこれでは空間を無駄にしているというので,ゴールデンウィーク最終日の数時間を使って棚をしつらえることにした。 2X4のこの家は45cmおきにどこでも釘を打てるので,見栄えさえ気にしなければ,棚の取り付けくらい訳はない。

中のものを全て外に出して,脚立代りに椅子を置いてみる。すると,そこはなんだかとても居心地の良さそうな場所に思えた。

中学くらいの頃,六畳の和室が僕と弟の部屋だった。 ある時 何を思ったのか,弟は和室の押入れの上の段に布団を敷いて二段ベッドのようにし,その中に電気スタンドやラジオなどを持ち込んで「個室化」を断行した。 それをみつけた親はすぐに止めさせようとしたが,彼はそれを聞き入れず,しばらくの期間,そこに入ってはラジオを聴いたり本を読んだりしていた。 そんな弟との奇妙な同居がどのような形で終わったのか,今ではもう忘れてしまったけれど,「押し入れ生活」を卒業した弟は,それまでと少し違って見えたように思う。

訳のないはずだった棚の取り付けは意外にも難航し,壁には予定外の傷がいくつも残る始末となった。


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