朝の商店街

普段は山の上にあるキャンパスに通っているが、仕事の都合で、市街地に近い施設に数日だけ通うことになった。朝の渋滞を考え、かなり早めに家を出て、仕事の始まる前に商店街のコーヒーショップで朝食をとることにした。 本でも読みならがそこで時間調整をしようというわけだ。 そうやって一日目を割といい感じでスタートさせることができたので、二日目も同じ時間に家を出ることにした。 前の晩にタイマーで録音しておいたFM番組を聴きながら運転していたら、テープが折り返す頃にはもう大学に到着した。 前日とほとんど同じ時刻だった。

前日と同じ場所に車を停め、商店街に向かう。 キャンパスの芝に目を遣ると、昨日もそこに居た野鳥が、昨日と同じように芝の上を歩き回っている。 

門を出て少し歩くと、そこはもう商店街だ。 電話ボックスで溜まったメイルを携帯端末にダウンロードしてからコーヒーショップに入る。 昨日と同じ店員が同じイントネーションで「いらっしゃいませ」を言う。 昨日と同じMサイズのブレンドコーヒーとサンドイッチを頼んで、昨日と同じ大きな丸テーブルの一角に座った。

するとどうだろう。昨日と同じ席に、昨日も見かけた女性が腰掛け、(おそらく)昨日と同じペーパーバックの続きを熱心に読み始めた。 小さな街のレストランで常連客が朝食をとる外国映画のシーンをたまに目にするけれども、こうした店にもやはり常連客は居るものらしい。

いい時間になったので店を出て、さっき来た道を戻る。 気が付くと、向こう側から歩いて来るのは、確か昨日も歩いていた顔だ。 舗道のほとんど同じあたりを歩いている。 

そして、仕事場では、昨日と同じ人たちと同じ仕事の続きが僕を待っていた。


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