解体

土曜の午後、街中のホテルで職場関係のパーティーがあった。 パーティーが終わった後、酔い覚ましにと、ひとりで街中を散歩して廻った。 ただ風に吹かれているだけでも心地良い、うららかな春の日。

ぶらぶらと歩いていると、大きなビルの横の公園みたいな場所に出た。 行き止まりかなと思ってビル脇に入ると、その先には地下道があって、通り抜けると線路の反対側に出た。 この辺りは昔は遊郭などがあった場所で、駅のすぐそばにもかかわらず、ほとんど開発されてこなかったらしい。 線路の向こう側には近代的なビルや商店街が広がっているのに、こちら側にはまだ昭和のはじめ頃の面影がたくさん残っている。

けれどもそうした建物も次第に取り壊されて、いずれはこの辺りも、線路の反対側と同じような街に変貌するのだろう。

取り壊される寸前の空家の玄関には、何故かバスケットボールがひとつ置き去りにされていた。


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