夕暮れ時に歴史のあるキャンパスの一角を散歩する。 大きく枝を広げた桜の大木には、全天を覆い尽くさんばかりの花が咲いていた。 その下では、もう暗くなるというので、それまで花見をやっていたグループがシートをたたんで、帰り支度をはじめている。 賑やかな割には後片付けは随分きちんとしていて、妙に感心した。
ときに植物の姿はグロテスクである。 黒ずんだ桜の幹は大きくへし曲がり、表面は穴やこぶだらけだ。 白っぽい場所があるので近づいて見ると、その小さなこぶのところどころに、内部の生命が噴出するかのように花が咲いている。 よく見ると、花を咲かせ、枝を伸ばし、そしてまた切り取られた無数の跡。 静かで、それでいて強い、意志のようなものを感じる。