「5分で済む用事がある」と妻がいうので,宮城県の南部まで彼女の車でドライブした。 桜で有名な小さな町の,幅の狭い道路の脇に車を停め,彼女は少し小走りに建物の影に消えた。そして,10分ほどしたら,今度は反対側の歩道から戻ってきた。
そのまま家に帰るのも「もったいない」ということになり,近くのコンビニでペットボトルのお茶を買い,丸森町方面に向かう。田んぼ道を南下していくと,とつぜん阿武隈川に行き当たり,そこがもう町の中心部らしかった。 連休だからか,小さな町の中には思いのほか沢山の車が往来していて,流れのほうに進んでいくと,割とあっけなく斎理屋敷の前にたどりついた。
斎理屋敷というのは,昭和のはじめころまでこの辺りで手広く商売を展開していた「斎藤さん」の家のことだ。 その屋敷の跡が,今では町の観光名所になっている。 昔の蔵や,当時を再現した屋敷の内部には,「お宝」だけでなく,当時のユーモラスなエピソードなども紹介されていて,連続テレビ小説でもみているようだった。
屋敷の縁側には,足をとめて日向ぼっこをする人たち。 遠くの山々は,もう雪に覆われていた。