いつも同じ道を走っていると、少し気になるポイントというのがひとつやふたつは出てくるものだ。 それは店の看板だったり、路地で飼われている犬だったり、ちょっと眺めのいい場所だったりと、いろいろだ。 けれど、いまどきはどこも交通量が多いので、なかなか車を停めるわけにもいかず、気になりつつもそのまま何ヶ月も経過していく。
その日は随分と早起きして気持ちにも余裕があったので、長い坂の途中で車を端に寄せて、その場所に立ってみた。 小さな山にお堂が建っているだけだけれども、霧の中で、朝日に照し出される様子を目にすると、何故かすこし救われたような気持ちになることがある。
この山の向こう側には高速道路が走っていて、さらに向こうは造成された団地が広がっている。 そんな中で、ぽつんと取り残されたように建っているこのお堂は、いつ位からここにあったのだろうか。 近くには川も流れており、その昔は山水画のような景色だったのかもしれない。
そんな様子をしばらく眺め 車に戻ろうとしたら、一台のワゴン車が坂の下のほうからものすごいスピードで走り抜けていった。 そして再び静寂が訪れたとき、20世紀の終わりに完成したはずのその道路さえも、どこか遠い昔の遺跡のように感じられた。