ついしばらく前まで使っていたオフィスの壁には,縦横に亀裂が走り,あちこちにガムテープを張った跡や汚れがあったので,装飾を工夫するというよりは,いかにそういったキタナイ部分を隠蔽するかに心を砕いたものだ。
それと対照的に,この新しいビルの壁は全面が薄いクリーム色の石膏ボードなので,対面すると焦点を合わせる場所がどこにもない。 これではまるで病棟のようだというので(まあ,ホントにそんなようなものだけれど),日曜日に妻とぶらぶら絵や写真をみてまわった。 壁にかけてある絵は樋口匡子という作家のもので,まだ若い人だからだろうか,かなり手ごろなお値段だった。
僕がこの部屋を去る頃には,きっとこの壁も釘の穴や汚れでいっぱいになっているんだろうな。