出張先のビジネスホテルで よく眠れたためしがない。 部屋は乾燥しすぎて皮膚はかさかさになり,クリーニングしたてのシーツが,むしろ不快にさえ思える。いつも低音で何かの機械音が響いているし,近くの部屋のドアの開け閉めも結構うるさい。それに,「明日は遅刻できない」という気持ちがあるので(私はマジメな人間です),大抵は,うなされるようにして目覚める。
その朝もそんな風に7時前には目が覚めた。
外の様子を見ようとカーテンを開けると,向かいのオフィスビルにはもう人が居て,シャツ一枚になって働いている。 座ったまま,キャスター付きの椅子をごろごろと転がし,キャビネットや引き出しの中の書類を機用に集める様子は,「オフィスの達人」といった風だった。 お茶を飲みながら新聞を眺める・・・ といった優雅な一日のスタートではなく,いきなりエンジン全開らしい。
その背中に,こっそりとエールを送った。