北九州の戸畑に出かけた。 九州ということでさぞや暖かいのかと思いきや、どんよりと曇った天気で、朝には小雪もちらほら舞っていた。 九州工業大学の知り合いのところでの用事を済ませ、飛行機の時間を気にしながらキャンパスを急ぎ足で歩いていると、芝の上の野良犬に目がとまる。 ひどく痩せこけて、足を引きずるようにして歩いている。

弱った野良犬を見ると、いつもある犬のことを思い出す。 前の職場は街中にあって、たまに野良猫や野良犬を見かけた(もっとも、それらの猫が本当に野良猫だったのかどうかはよく分からないけれども)。 ある夜、帰宅しようと玄関を出ると、コンクリートの上に弱りきった犬が横たわっていた。 どうやら以前はどこかの飼い犬だったらしく、僕のほうを見ながら、必至で尻尾を振ろうとしている。 けれども、もういくらも体力は残っていない様子で、尻尾さえ満足に振れない。 そのまま帰ってしまうのはなんだか申し訳ないように思われて、研究室に戻って何か食べ物を探した。 けれども、見つかったのはセンベイくらいで、しかたなく細かく砕いて犬に差し出してみた。 犬はそれを食べようとはしたけれども、いくらも喉を通すことは出来なかった。 次の日そこに行ってみると、周りには犬の姿はなく、その後はもう見かけることは無かった。 

芝の上で犬は枯葉の下の土をほじるように何かを食べていた(あるいは食べようとしていた)。 カメラを向けるとこちらを随分と警戒しているようだったので、これ以上近寄るのは止めにして再び駅へと向かった。


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