ガウス分布(補足)
ガウス分布関数のフーリエ変換
平均 $\mu$、分散 $\sigma^2$の正規分布 $$ p(x) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma^2}} \exp\left(- \frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right) $$ のフーリエ変換 $$ P(k) = \int_{-\infty}^{+\infty} p(x) e^{-ikx} dx $$ を考える。
分布関数を代入して指数関数のところをまとめると $$ P(k) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^{+\infty} \exp\left(- \frac{(x-\mu)^2 + 2 k x \sigma^2 i}{2\sigma^2}\right) dx $$ となるが、指数関数の中の分子のところを平方完成すると $$ (x-\mu)^2 + 2 k x \sigma^2 i = (x + i \sigma^2 k - \mu)^2 - \sigma^4 k^2 + \mu \sigma^2 k i $$ となるから、$x$の積分に関係しないところを括りだすと $$ P(k) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^{+\infty} \exp\left(- \frac{(x + i \sigma^2 k -\mu)^2}{2\sigma^2}\right) dx \times \exp\left(- \frac{1}{2} \sigma^2 k^2 - i \mu k\right) \tag{1} $$ となる。
ここで、上式の$x$についての積分の箇所($I$とする)を $x \leftarrow x + i \sigma^2 k$と変数変換すると $$ I = \int_{-\infty + i \sigma^2 k}^{+\infty + i \sigma^2 k} \exp\left(- \frac{(x -\mu)^2}{2\sigma^2}\right) dx $$ となる。 このときの積分経路は下図の左の赤線のように取って、$R \to \infty$とすればよい。
ここで、被積分関数は$x$の全域で正則である(微分が定義できる)から、 複素積分の基本的な性質から、積分経路は始点と終点以外、任意に変更が可能である。 そこで、下図の右のような経路を選んでみると、 両端の虚軸に沿った部分からの積分への寄与は$R \to \infty$で0であることが分かる。
例えば、右端の虚軸に並行な積分路からの寄与 $$ I_{+R} = \int_R^{R + i \sigma^2 k} \exp\left(- \frac{(x -\mu)^2}{2\sigma^2}\right) dx = \int_0^{\sigma^2 k} \exp\left(- \frac{(R + i t -\mu)^2}{2\sigma^2}\right) dt $$ について考えると、 $$ \left| I_{+R} \right| \le \int_0^{\sigma^2 k} \left| \cdots \right| dt = \int_0^{\sigma^2 k} \exp\left(- \frac{(R -\mu)^2 - t^2}{2\sigma^2}\right) dt \le \exp\left(- \frac{(R -\mu)^2 - \sigma^4 k^2}{2\sigma^2}\right) \times \sigma^2 |k| $$ のように上限を押さえることができるから、$R \to \infty$で$I_{+R} \to 0$となる
すなわち、 $$ I = \int_{-\infty}^{+\infty} \exp\left(- \frac{(x -\mu)^2}{2\sigma^2}\right) dx $$ であり、これはガウス分布関数(の指数関数部分)の積分そのものである。 よって、式(1)中で $$ \frac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma^2}} \int_{-\infty}^{+\infty} \exp\left(- \frac{(x + i \sigma^2 k -\mu)^2}{2\sigma^2}\right) dx = 1 $$
以上をまとめると、ガウス分布関数のフーリエ変換 $$ P(k) = \exp\left(- \frac{1}{2} \sigma^2 k^2 - i \mu k \right) $$ が得られた。
ここで、$P(0)=1$となるのは、確率密度の積分が$1$であるのだから、明らかである。